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バンドマンがおかしくなる理由をわかりやすく説明します
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高校や大学、専門学校を卒業した瞬間からフリーター。親泣かせ。奨学金という高額な借金をかかえて社会人生活がスタート。
基本的に頭が悪いから接客業のアルバイト。時給が安いから昼夜、曜日を問わず働かなきゃいけない。休日はライブの日だけ。
バンドにはお金がかかる。スタジオ代、楽器のローン、交通費、ライブのノルマ、レコーディング代、MVの制作費などなど。普通の人よりお金を持っていないのに、普通の人よりお金がかかる。
毎月やるライブは平日の早い時間でノルマが数万円。みているお客さんは数人。最初は来てくれた友達だって2~3回誘えばもう来てくれなくなる。返信がない。ライブが終わればライブハウスのスタッフに死ぬほどダメ出しを受ける。そのダメ出しの内容でメンバーと喧嘩をする。先輩から言われたことは何でも聞く。出された酒は何でも飲む。ライブの翌日は絶対にバイト。二日酔いでも意地で乗り切る。家に帰れば気絶したように眠ってまた明日が来る。
状況が厳しければ、自分に苦しみがあれば、追い込まれていればいるほど、「自分はバンドマンなんだ、今を生きているんだ」そんな気がした。
20代、普通の社会人が送れるような楽しいイベントや思い出を全く体験していない。華金て何?全部を音楽に注ぎ込んだ。いつか見えるであろう光のために、必死で耐えて、前を向いて、本気で音楽をした。
でも現実は変わらない。上京して10何年も音楽をしているのに、10代だったあの頃と全然変わっていない。ガラガラのライブハウス。歳だけ増えて後輩が増えていくことでもう、口を出す人もいなくなってしまった。
お金もない。時間もない。動員もない。希望もない。いつの間にか友達は音楽をやめて結婚して、子どもが生まれて。自分だけがピーターパンのようにあの日もまま。
次第に、仕事もバンドもうまくいっている恐ろしい人間が周囲に表れ始める。30代になって差がつくのはバンドマンとしての地位だけでなく、社会人としての地位も同じみたいだ。何をしてもうまくいかない俺。この世界の弱者。
でも音楽だけは自分に嘘偽りなくやってきた。じゃあどうしたらいい?現実に期待や希望がないなら、自分の中に光を見出すしかない。
「今日も良いライブができた」「嘘偽りない自分を表現できた」自分の内側に結果を求める。バンドマンの人生観や死生観が狂い始める。テストやスポーツみたいに点数がつけばさっさとあきらめがつくのに。病んだバンドマン。才能のないバンドマン。仕事のできないバンドマン。プライドだけは高いバンドマン。
バンドマンが普通の人間とは違った価値観を持っているのは当然。十何年もすり減らすだけの生活をしてみればわかる。「普通の人生も送ってみたかった」なんて嘆いてみてももう遅い。
…でもやっぱり音楽はやめたくない。
和真